民事信託(家族信託)とは

高齢化が進むなか、高齢者の認知症対策や財産管理の方法に関心を持たれる方が増えてきています。テレビや新聞、雑誌、インターネットなどでも多く取り上げられ、「民事信託」や「家族信託」という制度が財産管理のひとつの方法として紹介されることも多いです。信託銀行などの金融機関でも「遺言信託」などといったポスターやパンフレットなどを目にすることもありますし、信託という言葉を見聞きしたことがあるという方も多いか思いますが、実際のところ信託とはどういうものなのか、よくわからなかったりはしないでしょうか?

  • 自分や配偶者、家族の将来の財産管理に不安がある
  • 信託に興味があるが、どういう制度なのかよくわからない
  • 将来、施設に入るときに自宅を売りたい
  • 民事信託でできることとできないことを知りたい
  • 民事信託の手続きの流れが知りたい

高齢者や障害者のための財産管理の方法のひとつとして注目されている民事信託。人それぞれの状況や意向に合わせて柔軟な財産管理や遺産承継先の指定を行うことができることから関心が集まっています。

高齢化が進み、認知症や体力の衰えなどで自身や家族の財産を管理することが難しくなる、ということが他人事ではなくなってきている現在、誰がどのような方法でそれらの財産を適切に管理していくのかということが社会のひとつの課題となってきています。その方法のひとつとして注目されているのが民事信託という制度です。

信託とは

信託の定義は信託法第2条に書いてあるのですが、それをそのままここに書いてもわかりづらいですので、かみ砕いて書いてみると以下のようになります。

 

信託とは、契約や遺言などによって、委託者(財産の所有者・財産を託す人)が受託者(財産を託される人)にその財産の使い道などの目的を決めて自分の財産を託し、受託者がその目的を達成するためにその託された財産の管理や処分などを行うこと。

 

全然わかりやすくないですね・・・

 

もっとわかりやすいように、長崎市に住んでいるAさんが横浜市に住んでいる子のBさんに自宅を信託するというケースを例に説明します。

 

Aさん(委託者)がBさん(受託者)と信託契約を結んで自宅をBさんに信託します。

 ↓

自宅の登記名義人をBさんに変更する不動産登記を申請します。

 ↓

Bさんが自宅の登記名義人になります。

(信託されていることは登記簿に記されます。)

 ↓

Aさんは以前と変わらずにBさん名義の自宅に住み続けることができます。

Aさんが年齢による体力の衰えや認知症などで自宅で暮らすことが難しくなり施設に移る必要が出てきたときには、Bさんは自宅を売却し、その売却した資金をAさんの施設入居費やその後の生活費などに充てることができます。Aさんが亡くなったときは残った信託財産(Aさんが亡くなるまで自宅に住み続けた場合は自宅、売却した場合は売却で得た資金からその後Aさんのために使った分を引いて残った現金)は信託契約の定めに従ってBさんや弟のCさん、BさんとCさんに2分の1ずつなど、信託契約で指定された形で承継されます。

 

信託はこういったことを可能にする制度です。これは典型的なパターンの一例で、ほかにも事情に合わせて様々な形の財産の管理と承継の方法を契約によって定めることができます。信託できる財産は不動産に限られず、現金や有価証券なども信託することができます。

信託の特徴

信託すると「委託者」(Aさん)が託した財産(自宅)を「受託者」(Bさん)が管理したり処分(売却)したりすることになります。信託することで財産の所有権は受託者に移転し、移転した財産は受託者名義の信託財産になりますが、受託者は信託の目的に従って、受益者(Aさん)のために信託財産を管理処分しなければなりません。

信託の機能

信託の主な機能としては以下の3つが挙げられます。

 

①財産管理機能

委託者に代わって受託者が信託の目的の範囲内で財産を管理処分します。

 

②転換機能

財産を信託することで「所有権」が「受益権」という「権利」(上述のケースですと「自宅に住む」権利や自宅の売却で得た資金を施設入居費などの支払いに充てる権利)に変化します。

 

③倒産隔離機能

信託された財産の所有権は委託者から受託者へ移転するため、原則、委託者が破産してもその影響を受けません。また、信託財産は受託者個人の財産とは分別して管理されるため、受託者の破産の影響も受けません。

民事信託とは?家族信託との違いは?

信託は受託者が営業として引受ける(収益または報酬を得る目的で継続的・反復的に引き受ける)か否かによって「商事信託」と「民事信託」の二つに分類することができます。受託者が営業として引き受ける場合が「商事信託」にあたり、商事信託は信託業法によって規制されているため、免許や登録を受けた信託銀行や信託会社のみが受託者になることができます。

一方、営利目的ではない信託が「民事信託」です。受託者が報酬を受け取ることも可能ですが、無報酬の場合も多いです。

「家族信託」と呼ばれているものもこの民事信託のひとつの形で、民事信託では委託者や受託者、受益者の全員が家族であることが多いことからそのように呼ばれることがあるようですが、民事信託は必ずしも関係者全員が家族や親族である必要はなく、場合によっては一般社団法人などの法人も受託者となることができます。

また、信託銀行などの金融機関で取り扱っている「遺言信託」は遺言の作成から遺言執行までをサポートするサービスで、民事信託のような財産管理のための制度とは異なります。

民事信託でできること

民事信託を利用することで以下のようなことが可能になります。

・本人(委託者)が元気なうちに財産の管理を任せたい人(受託者)を選んで財産の管理を託すことが出来る。

・本人が認知症で財産を管理する能力を失ったとしても成年後見制度を利用することなく、本人に判断能力があるうちに信用して財産を託した人(受託者)に財産の管理や処分を任せ続けることができる。

・本人が体力の衰えや病気、ケガなどで自宅や所有するアパートなどの収益物件の管理や売却、マンションの管理組合での議決権行使や理事としての活動などができなくなったとしても、受託者にそれらのことを任せることができる。

・信託契約で本人が死亡したときに信託財産を承継する人(法人も可)を定めておくことで、遺言と同じように事前に財産の承継先を決めておくことが出来る。

・本人が死亡しても遺産を承継する人(たとえば障害を持つ子など)の財産管理を引き続き受託者に託すことが出来る。

・遺言でできないような2世代先の財産の承継先を指定することができる。

上記は代表的な例になりますが、このほかにも民事信託を利用することによって様々な形での財産の管理や承継を行うことが可能です。

民事信託でできないこと

・身上監護(しんじょうかんご)

身上監護とは本人の生活や健康の維持、療養等に関することを本人のために行うことで、具体的には住居の確保や生活環境の整備、施設入所や医療、介護などについての契約や手続などを行うことを指します。成年後見制度の成年後見人は成年被後見人(本人)のためにこの身上監護を行うのですが、民事信託は受託者に「財産の管理」のみを託す制度であるため、受託者は成年後見人のように委託者に代わって契約などの法律行為を行うことはできません。

先に挙げた身上監護の具体例のうち、住宅の確保や生活環境の整備などでそれらを行うにあたって契約などの法律的な効果を発生させるようなことがないものは、親族などが信託契約や成年後見制度とは関係なく本人のために行うことができますが、契約やたとえば本人の親族が亡くなって本人が相続人になった場合の遺産分割協議などの法律行為は、親族や受託者が本人に代わって行うことはできません。委託者の将来に備えて身上監護も行うことができるようにしておきたい場合は、民事信託契約と併せて任意後見契約を結んでおくことで財産管理と身上監護を行うことが可能です。

 

・全財産の承継

信託開始後に受給した年金など、信託した後に取得した財産全てを自動的に信託財産とすることはできません。信託契約で定めておけば信託開始後に信託財産を追加することは可能ですが、追加するためにはその都度、委託者と受託者の合意が必要ですので、委託者が認知症になってしまうと追加信託はできませんし、認知症にならなかったとしても委託者の手元に生活費などの現金や預金など信託されていない財産は常に多少はあるでしょうから、現実的には信託では遺言のように全財産の承継先を定めることは難しく、そういった信託財産以外の財産を相続するためには本人が遺言を残して信託財産以外の遺産の承継方法を定めておくか、相続開始後に相続人間で遺産分割協議を行うことになります。

 

・遺留分減殺請求への対策

民事信託をしたからといって、委託者に相続が発生したときに遺留分を侵害する財産の承継を行うような内容の遺産承継方法を定めていれば遺留分減殺請求を免れることはありません。

 

・損益通算

これは税金に関する話ですが、信託財産に収益不動産が含まれる場合、民事信託することによって所得税額が増えてしまうケースがありますので、事前にその点について検討しておく必要があります。タイミングにもよりますが、大規模修繕が予定されているような建物を信託する場合には特に注意が必要です。詳しくは税理士さんに相談することになります。

 

・相続税の節税

民事信託を利用することで間接的に節税することができる場合があるかもしれませんが、信託したからといって直接的に相続税などを節税することはできません。

 

・農地の信託

民事信託では信託後も農地をそのまま農地として利用する場合は原則、農地を信託することはできません。宅地等へ転用するのであれば農業委員会の許可や届出を条件に信託することが可能です。

民事信託の活用例

とてもおおまかなものなりますが、民事信託でこういったことができるという活用例を挙げてみます。

 

◇ 高齢者の認知症対策として

委託者:A(高齢の親)/ 受託者:B(子) / 受益者:A

信託財産:自宅(土地建物) 現金500万円

帰属権利者:B

とてもシンプルな例です。信託が開始してもAは同じように自宅に住み続け、もしAが認知症や病気、体力の衰えなどで自宅に住み続けることが難しくなり施設に入居することになったら、Bが自宅を売却し、その売却で得た資金は信託財産となり、そこからAの施設入居費やその後の生活費、医療介護費等を支払うことができます。Aが亡くなると、残った信託財産はBに帰属します。

 

◇ 障害を持つ子供の将来のために

委託者:A(親) / 受託者:B(次女) / 受益者A→C(Aが亡くなったら長女Cに)

信託財産:自宅(土地建物) 現金1000万円

帰属権利者:B

障害を持つ長女Cの将来の財産管理を心配する親のAが自分が亡くなった後のCの財産管理を次女Bに託す形の信託です。実際には姉妹の年齢やそれぞれの家族構成、信託財産などによって検討すべきポイントが多数ありますが、条件が整えばこういった形で親が亡くなった後の障害を持つ子の財産管理が可能になります。

 

◇ 収益物件の管理のために

委託者:A(高齢の親) / 受託者:B(子) / 受益者:A→C(Aが亡くなったら配偶者Cに)

信託財産:賃貸アパート1棟 現金1000万円

帰属権利者:B

高齢の親が所有する賃貸アパートを信託することで入居者との契約やトラブル対応、家賃の受領、建物の管理・修繕、修繕のための建物を担保とした借入、場合によっては売却・・・など高齢の親Aには大きな負担となるアパート経営を子Bが行うことが可能です。子がアパート経営を行いながら、受益者をA、Aが亡くなったら配偶者のCとすることで賃料収入や売却で得た資金はAやCが受け取って生活費とすることができます。AとCが亡くなると残った信託財産はBに帰属します。

 

◇ マンションの管理組合活動のために

委託者:A(高齢の親)/ 受託者:B(子) / 受益者:A

信託財産:自宅(区分所有マンション) 現金500万円

帰属権利者:B

自宅を信託したケースと似た形ですが、子が受託者となることで高齢の親に代わってマンション管理組合の総会等に参加して意見を述べ、議決権を行使したり、管理組合の理事に就任したりすることができます。管理組合に届出をしておけば総会の通知などが受託者に届くようになりますので高齢の親が書類などに目を通す負担もなくなります。

民事信託のことは司法書士にご相談を

民事信託は柔軟な財産管理を行うことができることで関心を集めている制度ですが、実際に信託を行うためには信託についてはもちろん、契約書の作成や登記手続きなど法律や制度に関する幅広い知識や理解が必要です。また民事信託は長期に渡って財産管理を行うことになるため、先々に想定しうるリスクについての検討や信託開始後の受託者のサポートも欠かせません。

民事信託の利用を検討するにあたってはまずは民事信託に詳しい司法書士に相談してみませんか?当事務所の司法書士行政書士浦町は民事信託士の資格を有し、また一般社団法人民事信託推進センターのマンション支援信託推進委員会の一員として、日々、民事信託実務についての研鑚を重ねております。ご相談いただくことで、仕組みや用語などわかりづらいところのある民事信託や成年後見、遺言などの制度をわかりやすい言葉で丁寧に説明し、民事信託が相談者様にとって必要なものなのか、成年後見や遺言など他の方法で実現できないか、またはそれらの制度を併用するのがよいのか、などを一緒に検討し、納得のいく形での今後の財産管理が実現できるよう努めております。

料金

民事信託 60万円(税込)~
(信託財産の額や内容によって変動いたします。)
相談のみ、または継続相談 5,500円/30分

※別途、登録免許税・公正証書作成費等の実費がかかります。

ご相談の流れ

1. ご予約 ご予約フォームまたはお電話にてご予約ください。
2. ご相談 当事務所またはご希望の場所にてお話をおうかがいいたします。
内容によっては相談が複数回~長期に渡ることがあります。
3. お見積り ご相談の内容を受けてお見積りを作成いたします。
4. ご契約 司法書士行政書士との委任契約を締結いたします。
5. 着手金のお支払い 費用の一部を着手金としてお支払いいただきます。
6. 信託契約書の作成 相談の内容をもとに当事務所が信託契約書の文案を作成し、公証人や信託口口座を開設する金融機関とその内容について調整いたします。
7. 公正証書の作成 公証人による公正証書の作成に立ち会います。
8. 信託口口座の開設 銀行等の金融機関にて信託口口座を開設していただきます。
9. ご署名ご捺印 登記申請の委任状等へのご署名ご捺印をお願いいたします。
10. お支払い 着手金を除いた残りの費用全額をお支払いいただきます。(現金またはお振込み)
11. 登記申請 信託登記を申請いたします。
12. 手続き完了・納品 登記識別情報・登記完了証・信託開始後の注意点などが記載された資料等をお渡しいたします。

ご相談の際にご用意いただくもの

ご相談の際には以下の書類があるとお話がスムーズに進められますが、手元にない場合は無理に集めていただかなくても構いません。

 

・不動産の権利関係書類(封筒やファイルなどにいろいろな書類が入った状態で構いません)

・固定資産税の納付書

・預金や株式、保険など財産の内容がわかるもの

 

ご持参いただく書類についてご不明な点がありましたら、ご予約の際にお気軽にお尋ねください。

まずはご相談ください

当事務所では民事信託や成年後見、遺言等の財産管理に関する様々なご相談を承っております。これから今後の財産管理について考え始めたい、既に始めているけれども現在の方法でよいのか、または他の方法を検討すべきなのか、など、どういったことでも構いませんので今後の財産管理についてご相談されたいことがありましたら、ご遠慮なく一度、当事務所へご連絡ください。大切な財産についてのことですから簡単に決められるようなものではありませんので、初回相談後、じっくり考えながら継続的にご相談いただくことも可能です。継続相談では相談料をいただきますので相談のみで何もご依頼いただかないという結論になっても構いませんし、状況をうかがってこちらからそのようにお勧めさせていただく場合もございます。また、当事務所では他所でのご相談のセカンドオピニオンとしてのご相談も受け付けております。相談者様がご納得され、安心することのできる今後の財産管理の方法をご一緒に検討させていただけますと幸いです。事前にご予約いただけましたら、土日祝日や平日の遅い時間などでもご対応いたしますのでお気軽にお申し付けください。

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